戦争社会学研究会 第3回研究大会プログラム

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2012年3月10日(土)

■研究報告1(12:30-14:00)
報告:亘 明志(長崎ウエスレヤン大学)
テーマ:「戦時朝鮮人強制動員と統治合理性」
要旨:
 戦時強制労働に関心を持つ人たちの間では、しばしば「炭鉱では食べ物も十分与えず、過酷な労働を強要し、徴用された鉱夫が死んでも葬式もせず、死体を山野に埋めた」ということが当然の前提のように語られてきた面がある。ところが、北海道で収集された炭鉱・鉱山企業の資料からは、一定の食糧の確保や死者の葬儀、遺骨の遺族への返還に努めていた面もうかがわれる。また、福岡県の炭鉱で死亡した朝鮮人労働者の遺骨の多くが、企業によって遺族のもとに届けられていることも確認されつつある。これらの事実を踏まえると、植民地動員は天皇制イデオロギーの貫徹や強権的な国家権力の行使とだけ捉えるのは妥当ではなく、「統治合理性(フーコー)」という観点からの捉えなおしが必要なのではないか。
また、日本の近代化過程の中に戦時植民地動員を位置づけるためには、戦争遂行としての強制動員の実態解明とともに、それがいかなる動員計画のもとに実施されたかを検討し、計画と実態の齟齬を解明する必要がある。1)「(植民地動員を含む)国家総動員計画」はどのようにして策定されたか、2)「総動員体制」下での動員組織(機構)の形成とその整備・運営はどのようになされたか、3)動員法の体系化とその施行を通して動員はどのようになされたか。これらの点について「統治合理性」の観点からの分析・解明を試みたい。

司会:打越 正行(首都大学東京)

■休憩(14:00-14:15)

■シンポジウム(14:15-17:15)
報告:
高橋 三郎
吉田 裕(一橋大学)
テーマ:「『戦争』研究の視角――社会学と歴史学の交差」
要旨:
「戦争」をめぐる研究は、社会学でも一定の蓄積がなされつつある。だが、同時に歴史学に学ぶところも多かった。では、社会学と歴史学をどのように交差させていけばよいのか。
 本シンポジウムでは、『「戦記もの」を読む』(1988年)・『強制収容所における「生」』(2000年)・『共同研究 戦友会』(1983年)など、社会学において戦争体験研究を牽引してきた高橋三郎氏と、『日本人の戦争観』(1995年)・『兵士たちの戦後史』(2011年)などで社会学にも影響を与えた歴史学者・吉田裕氏にご報告いただき、ご自身の研究史や周辺領域のディシプリンをどのように位置づけこられたのか等について、語っていただく。
 それに対し、『決死の世代と遺書』(1991年)・『若き特攻隊員と太平洋戦争』(1995年)等で戦争体験研究を進めてきた森岡清美氏、『「満州移民」の歴史社会学』(1994年)等、「満州移民」研究の蓄積が厚い蘭信三氏、『「戦争体験」の社会学』(2006年)などで新たな戦争体験研究を拓いた野上元氏に、コメンテーターや司会を務めていただく。
 研究者の世代をまたぎながら、「戦争」研究における社会学と歴史学の交差を、討議を通じて考察していきたい。

コメント:
森岡 清美
蘭 信三(上智大学)
司会:野上 元(筑波大学)

■総会(17:30-18:15)

■懇親会(18:30-)

3月11日(日)

■研究報告2(10:30-12:00)
報告:直野 章子(九州大学)
テーマ:「被ばくと『受忍』――戦後補償の歴史から原発事故を考える」
要旨:
 2011年3月11日に起こった大震災をアジア太平洋戦争と比較する論評は数多いが、特に、原発事故に関する責任を戦争責任と重ね合わせて論じるものが少なくない。実際に、東電福島第一原子力発電所事故の問題は、戦後補償の問題と通底する。本発表では、「受忍」を中心概念としつつ、戦後補償の歴史から、現在作られつつある原発事故に対する補償制度の問題点を考えていきたい。
 戦争被害に関しては、「非常事態」だったからという理由で、財産損失も身体被害や生命損失も一様に「受忍すべし」と国家が命じて「耐え忍ぶべき被害」が戦後に作り出されてきた。原発事故では、「非常時」を理由に、作業者が高線量の被曝を余儀なくされ、周辺住民が不要な被曝を強いられた。健康被害が生じたとしても、厳しく放射線起因性を問うことで事故との因果関係を否定し、「放射能恐怖症」として国や東電が補償を拒否する可能性も高い。他方で、事故を起こした責任者たちは、国家の援助によって保護されかねない。戦争に対して最も責任がある高級軍人に対しては手厚い援護をしながら、非戦闘員には被害の受忍を強い続けてきた戦後補償の歴史が繰り返される可能性が高いのだ。

司会:青木 秀男(社会理論・動態研究所)

■昼食・休憩(12:00-13:00)

■ワークショップ(13:00-15:30)
テーマ:「戦争社会学をいかに構想するか~「戦争社会学ブックガイド」をめぐって」
要旨:
 「戦争」に関する研究は、従来、政治学や歴史学で多く扱われてきたが、社会学の方面でも、この種の関心が高まっている。本研究会も、こうした学問動向のなかで発足した。
 しかし、その方法論や分析手法は、メディア研究から言説分析、システム論、ライフ・ヒストリー研究等、多岐にわたる。それだけに、方法論の共有化はさほど進んでおらず、むしろ専門分化が進行しているようにも思える。
 そこで、本ワークショップでは、野上元・福間良明編『戦争社会学ブックガイド』(創元社、2012年3月刊行予定)を取り上げながら、
・「戦争社会学」をいかに構想できるのか
・歴史学、思想史研究等、近接分野との関係をどう位置付けることができるのか
といった点について、議論を進めたい。

コメント:
一ノ瀬 俊也(埼玉大学)
木村 至聖(甲南女子大学)
応答:
野上 元(筑波大学)
福間 良明(立命館大学)
司会:石原 俊(明治学院大学)

※ 発表に際し、パワーポイントをご使用の場合は、ノートPCをご持参ください。
DVDも使用可能です。
※ 場合によって多少の変更の可能性があります。

会場
〒112-0012 東京都文京区大塚3-29-1
筑波大学東京キャンパス文京校舎 117講義室

筑波大学 東京キャンパス文京校舎へのアクセス・路線図
・電車でのアクセス
丸ノ内線茗荷谷(みょうがだに)駅下車「出口1」徒歩2分程度
※ 詳しくは、以下のキャンパスマップおよびアクセスマップをご参照ください。

http://www.tsukuba.ac.jp/access/bunkyo_access.html