第5回 戦争社会学研究会 大会プログラム
2014年3月8日(土)
■個人報告1(12:30-14:15)
司会:蘭信三(上智大学)
報告者:櫻井悟史氏(立命館大学専門研究員)「軍隊における刑罰についての思考様式――死刑を手がかりに」
・要旨
報告者は、日本で死刑が存置され続けるのはなぜか、死刑を支える思考様式とはなにかという問題関心から、研究に取り組んでいる。そうした研究において避けることができないのが、軍刑法における死刑についてである。
先行研究では、軍法会議の運用について、手続き上さまざまな問題があったことが指摘されている。また、戦時体制下においては、一般刑法による死刑より、軍刑法による死刑の方が圧倒的に多かったことを示唆するデータもある。しかし、手続き上の問題があったことと、刑罰として死刑が多く用いられたことは必ずしも順接しない。それでは、なぜ軍隊では一般刑法と比べて多くの死刑が用いられたのか。そうした死刑の運用が可能だったのはなぜなのか。
本報告の目的は、身体に苦痛を加えることと軍隊社会のよりよき統制がいかに結びついていたのかに注目し、そこから大量の死刑を可能とした刑罰についての思考様式を明らかにすることで、上記の問いにこたえることにある。また、そうした思考様式が、戦後の死刑論争にいかなる影響を与えたのか、すなわち軍刑法の廃止とともにそうした思考様式も廃棄されたのか、あるいは別の形で戦後に継承されたのかについても、あわせて検討したい。
■シンポジウム(14:30-17:30)
「被爆者をめぐる運動・調査と広島」(仮題)
司会:野上元(筑波大学)・福間良明(立命館大学)
問題提起:青木秀男(社会理論・動態研究所)、根本雅也(一橋大学)
討論者:西村明(東京大学)
・要旨
福間良明ほか『複数の「ヒロシマ」−記憶の戦後史とメディアの力学』(青弓社、2012年)や浜日出夫ほか『被爆者調査を読む−ヒロシマ・ナガサキの継承』(慶應義塾大学出版会、2013年)など、社会学関連の分野だけでみても、「ヒロシマ」を対象とした研究成果は刊行され続けている。いうまでもなく3.11以降の状況にもそれは関係していよう。
このシンポジウムでは、広島という地点から被爆の問題を考えつつ、それを普遍化してゆくことを目指したい。そのために、「被爆」というできごとを構成している重層的な場を浮かび上がらせること、すなわち「地域」「空間」を「方法」として考えてゆく必要がある。特に、これまで別のテーマとして考えられてきた様々な社会的な作用(「行政」「社会調査」「社会運動」など)を組み合わせながら考える場にしてゆきたいと考えている。
・青木報告要旨
報告者は、かつて共同研究として〈被爆体験〉をめぐる広島社会の統合過程について、とくに被爆者差別の局面から、大阪市における被爆者差別の構造と対照させつつ、分析を試みた。それから37年間、報告者は、被爆の研究から遠ざかったが、現在(つい最近)、市内の被差別部落を対象に、そこにみる原爆被害の〈構造的差異〉とその意味について分析を始めた(そこには、東日本大震災と福島原発事故をめぐる災害社会学の議論に触発されたという事情もある)。報告では、「原爆(被害)と広島社会」という持続する問題関心のもと、〈被爆体験〉の分析から転じ、具体的な地域次元の原爆被害の分析を行う。すなわち、原爆炸裂前後の被差別部落に焦点を当て、そこにみる被害の〈構造的差異〉(被害・差別・貧困)とその社会的意味をめぐって、準備が可能な範囲で、話題提供を行う。上記のような経緯のため、報告者に、報告を「原爆と広島社会」の研究史の全体に位置づけて行う力はない。報告では当地区で運動する方の発言もお願いする予定である。
・根本報告要旨
広島と長崎に投下された原子爆弾は、多くの人々を無差別に傷つけ殺し、その後も影響を与えてきた。しかし、一方で、この核兵器という暴力による惨禍は、人びとが新たな価値を生み出す契機ともなった。本発表は、広島の平和運動と市行政に焦点を当て、これらが原子爆弾とその惨禍にどのような意味を見出し、いかなる行動を創り出してきたのか、その歴史的過程を探る。それを通じて、本発表は、広島における人道主義的な視点・態度の形成と展開について検討することにしたい。
■総会(17:35-)
■懇親会(18:00-)
3月9日(日)
■個人報告2(10:30-12:15)
司会:山本昭宏(神戸市外国語大学)
報告者:安錦珠(アン・クンジュ)氏(社会理論・動態研究所)「韓国人被爆者の訴訟と日本・韓国社会」
・要旨
1945年、原爆が投下された際、広島で約16万人、長崎で約7万4千人が被爆死したと推定されている。その中には「日本人」として、日本の侵略戦争に動員された朝鮮人が多数含まれていた。その数は総被爆者の1割を超え、広島で5万人、長崎で2万人といわれている。彼/彼女らは日本の植民地政策により故郷を離れて来日を余儀なくされた人々であり、その日本で被曝するという二重の被害を被った人々である。終戦後、帰国した多くの韓国人原爆被害者らは被曝の事実を隠し、被曝した体で苦難の生を送ってこられた。
昨年の8月、広島、長崎の原爆の日の式典あいさつで、安倍首相は「私たち日本人は、唯一の、戦争被爆国民」と発言した。海外で被爆者健康手帳を持つ被爆者は、韓国、アメリカ、ブラジル、北朝鮮、台湾など38の国・地域に約4千人の被爆者がいる。そのうち韓国在住が約3千人である。
在外被爆者が日本政府に対して日本国内の被曝者同様の援護を要請すると、402号通達(1974年。2007年最高裁判所判決で覆された。)を出し、在外被爆者に対して差別を行なわれてきていた。在外被爆者の権利獲得のための支援活動の過程と在韓被爆者の現在の実情や残された課題などを概観する。
■テーマセッション(13:30-16:30)
「核兵器と太平洋の被爆/被曝経験」
司会:石原俊氏(明治学院大学)
報告者:竹峰誠一郎氏(明星大学)、真下俊樹(日本消費者連盟共同代表・埼玉大学非常勤講師)
討論者:山本昭宏(神戸市外国語大学)
・要旨
昨年度に引き続き、「核」をテーマにしたセッションを組んだ。
今回はグローバルな視座を導入し、太平洋における核実験とその被害者の問題を考えたい。
米英仏の核実験場であり、”Nuclear Playground”とも呼ばれた太平洋はいま、どうなっているのだろうか。その現状について思いを巡らせる機会は、意外なほどに少ない。
登壇者には、マーシャル諸島における核実験被害に関する研究の第一人者で「グローバル・ヒバクシャ」概念の提唱者の一人でもある竹峰誠一郎氏、
太平洋におけるフランスの核実験や、それに対する仏領ポリネシアでの反核運動・脱植民地運動について研究してこられた真下俊樹氏を招き、お話しいただく。
討論者は広島を軸に戦後日本の核エネルギー認識の変遷を研究してきた山本昭宏が務める。
2014年は、マーシャル諸島での水爆ブラボー実験から60年の節目に当たる。
各地域に固有の問題に取り組むことの重要性は言わずもがなだが、核被害の問題を広島からどこまで繋いでいくことができるのか、そこから何が見えてくるのか、広く議論したい。
*会場
(財)広島市未来都市創造財団 アステールプラザ
〒730-0812 広島市中区加古町4-17
TEL:082-244-8000 FAX:082-246-5808
*大会参加費など
会員(専任・院生とも):2000円(+年会費)
非会員(専任・院生とも):3000円
年会費、有職者:2000円、その他のかた:500円
*懇親会
研究会会場周辺で懇親会を開催いたします。
院生等の方々には、過度の負担がかからない程度の金額設定で考えております
*聴覚障害等のある方で、情報保障の必要な方は、2月末日までに、下記の連絡先までお問い合わせください。(予算・人員の関係上、手話通訳等ではなくノートテイク等での対応とさせていただく可能性がありますが、あらかじめご了承ください。)
*視覚障害等のある方で、情報保障の必要な方は、2月末日までに、下記の連絡先までお問い合わせください。(できるだけ報告レジュメの電子ファイルでの事前提供に努めますが、報告者によっては事前提供や電子ファイルでの提供が難しい場合もあります。あらかじめご了承ください。)
*発表に際し、パワーポイントをご使用の場合は、ご自身のノートPCをご持参ください。
*場合によって多少の変更の可能性があります。
*問い合わせ先
打越正行 宛 ssw.adm@ gmail.com
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