関連論文の紹介
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特集 精神医学の学際研究への参画と課題
中村江里「第二次世界大戦とトラウマに関する学際的研究」
『精神神経雑誌』第127巻第12号

特集 精神医学の学際研究への参画と課題
中村江里「第二次世界大戦とトラウマに関する学際的研究」
『精神神経学雑誌』第127巻第12号

「30ヵ国以上が関与した第二次世界大戦は,7,000万人以上の命を奪っただけでなく,生き残った人々の心身を傷つけ,国家や文化のあり方をも大きく変容させた.このような大規模暴力が個人や社会に及ぼした影響を明らかにするため,精神医学・臨床心理学や,著者を含む人文社会学研究者が実行委員会を組織し,2021年より「日本における第二次世界大戦の長期的影響」をテーマに,オンラインで連続シンポジウムを行ってきた.2024年までの4年間でのべ900名を超える研究者や精神保健・教育・メディア関係者,市民にご参加いただいている.また,2021年度のシンポジウムの記録は,2023年4月に日本評論社より書籍『戦争と文化的トラウマ―日本における第二次世界大戦の長期的影響―』として出版された.本シンポジウムの大きな特徴は,それぞれの学問領域や精神保健医療福祉で取り組まれてきた戦争とトラウマの問題を,学際的に探究するという点にある.トラウマを伴う戦争の経験は,強い感情や痛みを引き起こすため,集合的な戦争の記憶から切り離され,断片化しやすい.これらの記憶を統合し,戦争の全体像に近づくためには,さまざまな分野の協同作業が不可欠である.また,本シンポジウムでは,個人レベルでのトラウマだけでなく,日本社会の集合レベルでの「文化的トラウマ」が重要なテーマとなっている.トラウマが個人的・集合的にもたらす長期的な影響を,生物学的・心理的・社会的にトータルで理解するうえでも,やはり学際的な検討が不可欠である.さらに,本シンポジウムは国際性を志向した取り組みでもある.本シンポジウムでは,かつて第二次世界大戦の対戦国同士であった日本とオーストラリアの研究者が実行委員を構成しており,加害と被害の両側面をもつ日本の戦争経験の全体像を理解することをめざしている.今後はアジア・太平洋諸国との平和構築に向けたさらなるネットワーク構築が課題である.」

本文PDF→https://doi.org/10.57369/pnj.25-139