内政干渉?

5月 27, 2005 under 時事・社会

やっと帰って来た。
ここ最近一日の休みもなく忙しくしている間(まだ忙しいのであるが)、世間ではいろいろなことがあったようだ。
首相の靖国問題に対する中国や韓国の反発が内政干渉かどうかという問題だが、これはそもそも内政干渉の言葉の理解からして誤っているので議論にもならない。


現在、靖国神社は単立の宗教法人であるから、その法人への参拝に対する反発は内政干渉にはあたらない。
これが仮に国家護持された、国立の神社であるなら話は別である。
あるいは、国民がみな首相に靖国へ参拝してもらいたいと思っており、そのように国民投票でもして過半数の指示を得た上での参拝に対して反発するのなら、内政干渉にあたるであろう。
しかし、政教分離原則下の今の戦後の日本ではそのような状況にはなることはない。
これが内政干渉になるような世の中になったら大変なことである(!)。
この問題を報じているメディアにも問題があるといえる。
首相の靖国参拝に対する批判を主張している民主党党首や、中国・韓国両国に配慮して参拝をひかえるよう勧めているという公明党の幹事長などだけがメディアに流されていたが、冗談ではない。首相の靖国参拝に反対する声は日本国内でも多いのである。
実際に訴訟も起こされているし、日本基督教団をはじめ戦前に統制され、弾圧されてきた多くの宗教団体は反対している。
戦前の国家神道体制は、神社界自体にとっても国家に従属・利用され、その意味では神社神道は被害者でさえあるのだ。
政教分離の原則とは、国家権力と宗教との分離のことであり、これは国民の人権を保障するための大きな歯止めのひとつである。
際限のない国家権力を制御するための原則である。
実際の人間であるから私的であるか公人であるかを分けることは出来ない、というのは日本人には理解できるダブル・スタンダードな論理である。
だが、かといって政教分離の原則を、なし崩し的に形骸化し、骨抜きにしていいというのではない。
まったく逆だ。
分けることはできないなら、むしろ首相が首相である期間、閣僚が閣僚である期間、知事が知事である期間は、いかなる宗教への参拝も禁止する法律をこそ作るべきなのである。
公人はそこらのオッチャンとは違うのである。
そうした国内のさまざまな声を報道せず、一部政党の代表者や、さらに中国や韓国などの非難だけを取り上げるということは、これを政治の問題としてのみ描き出してしまっている。
つまり、この問題は、日本国民にとってみれば本質的に「信教の自由」やそれを担保するための「政教分離原則」に関わる問題なのである。
それを外交や国益をそこなっている云々という批判に矮小化(あるいは転嫁)してはいけない。
さらに日本人の心情を理解しない中国や韓国が、他人の家のことに口出ししているという図式などに矮小化してもいけないのである。
ことは私たちの「自由」が侵されようとしている問題なのである。
これらはあまりにも単純化された図式であり、メディアは意図的に視聴者をそのように方向付けているかとさえ思わせるほどだ。
こんな言葉があるのかどうか不明だが(なければ自分で作るが)、政治家は「ヘイト・ブローカー(hate broker)」であると思う。
憎しみをうまく操作して、自己の目的に利用するのだ。
もちろん、限られた財の効果的かつ公平な分配という役割も持っているが、(それゆえそこには不正の始まる要素が常に存在する)、敵を作ることによって内部を引き締めるという手段はさまざまな文化でよく使われる手法だ。
そしてその道具としてメディアがあると考えられる。
ヤツら(They)とオレたち(We)、外集団(out-group)と内集団(in-group)という認識図式はチンパンジーの社会にもみられる、いわば霊長類の基本的な特性のひとつであることは、文化人類学の講義の初めにも紹介した。
自分を知るためにも、他の霊長類たちから学ぶべきことが人間にはたくさんある。

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3 Responses to "内政干渉?"

  • ■靖国神社 A級戦犯イコール「昭和殉難者」イコール神 そして公式参拝

    5月25日付・読売社説 [中国副首相帰国]「最低限の国際マナーに反する」 (抜粋)どんな理由があっても、非礼な行為は詫(わ)びる。それは、国際社会でも当然のルールだ

  • 「政教分離」と信教の自由について

    著者: 大石 眞
    タイトル: 憲法と宗教制度
    現代の日本社会に、「政教分離」に関する通俗的で誤った解釈が蔓延しているように感じる。
    憲法二

  • 梟の森 より:

    招待客はなぜ

    2003年5月 また同じ質問を繰り返して悪いのだけど、経営者も事務員も、中国の招

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