戦争社会学研究会 第4回研究大会プログラム

戦争社会学研究会 第4回研究プログラム

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2013年3月9日(土)
■研究報告1(12:30-13:45)
「1950年代の靖国神社遺児参拝の実像を探る」
報告:松岡 勲(立命館大学非常勤講師)
司会:福間良明(立命館大学)
要旨:
靖国合祀取消訴訟高裁結審の直前の2010年6月に、私は中学校3年生時(1958年)の靖国神社遺児参拝文集「靖国の父を訪ねて(第12集)」を私の書架から再発見した。そこには私の文章「もう一度行こう靖国へ」があり、「私はなんとなく父は立派な死に方をしたのだなあと思った」とあった。「これが当時の私の認識だったのか?」と愕然とし、当時の私は戦後版の「少国民」だったことに気づいたのだった。
そこから「1950年代の靖国神社遺児参拝の実像」を調べることを始めた。大阪府の遺児参拝は、1952年に「講和発効記念事業の一つとして」始まり、この後、1959年の第14回まで続いた。参拝は初年度の春秋2回の約540名から始まり、年1回の参拝になった1958年には1度に1000名近くも参加している。また、この遺児参拝は『靖国の父を訪ねて』という同一のタイトルの参拝文集が全国に残っていて、1950年代に全国的に同一歩調で行われたことが分かる。報告はその実像を中心に「靖国文集」(第12集)で発見した「国家の嘘を見破った少女」についても触れたいと考えている。

■シンポジウム(14:00-17:00)
「軍事社会史・軍事社会学と戦争社会学――「軍事」領域の社会学的重要性」
報告:河野 仁(防衛大学校)
鈴木直志(桐蔭横浜大学)
討論:佐藤成基(法政大学)
柳原伸洋(東海大学)
司会:野上 元(筑波大学)
要旨:
この研究会も4回目を迎えたが、「引き続き『戦争社会学』とは何か?」「これに何ができるだろうか?」と問い続けてゆきたいと考えている。今年度は、その問いを「軍事」に関する研究領域(軍事社会史や軍事社会学)との交錯で検討することにしたい。
もちろん、現象やできごととして考えるべき戦争と、ある社会領域として考えるべき軍事という違いはあるものの、そもそも両者は排他的なものではない。
それでも区別しようと思えば、研究領域を狭く取ることにも繋がりかねない。ただ、あえて両者を対比し、これらが持っている問題意識や狙いの本質、あるいは研究の出発点を浮かび上がらせてゆく作業を進めることで、戦争社会学の輪郭も浮かび上がってゆくのではないかと思われる。日本社会においては、一つの社会領域としての「軍事」が見えにくいという経緯もあったし、研究対象としての「軍事」研究と「平和」研究との関係も気になるところである。
このような課題設定のもと、今回は、近年顕著に展開されているヨーロッパ軍事社会史の精力的な担い手の一人である鈴木直志氏、また、『玉砕の軍隊、生還の軍隊』の著書があり、風化や継承といったテーマを持つ戦争体験研究や「戦争の記憶」研究とは少し異なったかたちで軍事についての社会学的研究を進めている河野仁氏に登壇していただく。また、討論者として、理論社会学、ナショナリズム研究の佐藤成基さん、ドイツ近現代社会文化史や歴史表象研究の柳原伸洋さんにも登壇していただき、「軍事」の問題にナショナリズムやメディアの作用を絡ませながら戦争社会学の輪郭を浮かび上がらせてゆく作業を継続することにしたい。

■総会(17:15-)

■懇親会(18:00-)

3月10日(日)
■テーマ・セッション1(10:00-13:00)
「〈基地文化〉と社会」
報告:松下優一(慶應義塾大学大学院)
南衣映(東京大学大学院)
塚田修一(帝京大学非常勤講師)
討論:山本昭宏(日本学術振興会特別研究員)
司会:鈴木智之(法政大学)
要旨:
1945年以降現在に至るまで、日本を含む東アジア社会は、みずからの内部に「米軍基地」を抱え込み続けてきた。そしてこの基地という物理的存在のみならず、そこから滲み出る象徴的な諸々――ここではそれらを〈基地文化〉と呼んでおこう――とも顕在的/潜在的に関係を取り結び続けてきた。
さらには、日本国内で考えて見ても、基地やその暴力性と日常的に出会わざるを得ない沖縄に対し、〈基地文化〉との連続性は殆ど人々の意識にのぼることがない本土、というように、この関係の在り様には濃淡があり複雑である。
本セッションでは、これらの基地及び〈基地文化〉と社会とが取り結んできた関係の諸相を、様々な視点から丁寧に検討し、議論を深めることで、日本社会あるいは東アジア社会の、「米軍基地」に対する集合的意識/無意識をあぶり出したい。

■テーマ・セッション2(14:00-17:00)
「核の「民事利用」とポピュラー・カルチャー」
報告:森下達(京都大学大学院)
山本昭宏(日本学術振興会特別研究員)
中尾麻伊香(日本学術振興会特別研究員)
討論:塚田修一(帝京大学非常勤講師)
司会:川口隆行(広島大学)
要旨:
近年、様々な研究領域で、核を扱ったポピュラー・カルチャーの掘り起し、内容分析、評価言説の分析が進みつつある。
ただし、これまでの研究がもっぱら原水爆を対象にしてきたことは否めない。原水爆という「兵器」ではない「核」をこれからどのように考えていくことができるのか、また、それがどう考えられてきたのかを検討することも必要だろう。原子力が夢のエネルギーとして語られる一方、そこでは放射線による被曝の問題は忘却されがちであり、放射線による身体的な変化が問題化されるときには、主に原水爆と関係づけて語られてきた。「核」に関する想像力には、一定の枠がはめられてきたと言えるだろう。
では、そうした想像力のありように、SF小説、映画、マンガといったポピュラー・カルチャー作品は、どのように加担し、またどのように抵抗していたのか。そこにはどのような限界と可能性があったのか。そういった点を議論することを通じて、日本社会に共有されていた核に関する認識の様態を浮き彫りにすることが、本セッションの目的である。

*会場
〒108-8636 東京都港区白金台1-2-37
明治学院大学白金キャンパス 2号館1階「2201」教室

*参加費など

大会参加費 有職者(専任・常勤職):1000円、その他のかた(非常勤・学生):500円

年会費 有職者:2000円、その他のかた:500円

懇親会費(予定) 有職者:4000円、その他のかた:3000円

*交通アクセス
http://www.meijigakuin.ac.jp/access/

*キャンパス案内
http://www.meijigakuin.ac.jp/campus/shirokane/

*明治学院大学白金キャンパスは、近隣に飲食店があまりなく、土日に営業している飲食店はごくわずかしかありません。春休み期間中のため、学内食堂も通常営業しておりません。3月9日(土)の昼食は、往路の途中で済ませていただくことをお勧めします。また、10日(日)の昼食は、お弁当等をお持ちいただくことをお勧めします。(近隣にコンビニエンスストアが数軒あるため、おにぎり・パン等は店に在庫があれば購入可能です。)

*車いす等の方は、「正門」を経由して入っていただければ、数センチの軽微な「段差」はありますが、「階段」はありません。(正門以外の入口から入られた場合、途中に階段があります。白金高輪駅方面から来られる場合も、お手数ですが正門へお回りください。)また、会場の教室名称は「2201」ですが、建物の1階にあります。

*聴覚障害等のある方で、情報保障の必要な方は、2月末日までに、下記の連絡先までお問い合わせください。(予算・人員の関係上、手話通訳等ではなくノートテイク等での対応とさせていただく可能性がありますが、あらかじめご了承ください。)

*視覚障害等のある方で、情報保障の必要な方は、2月末日までに、下記の連絡先までお問い合わせください。(できるだけ報告レジュメの電子ファイルでの事前提供に努めますが、報告者によっては事前提供や電子ファイルでの提供が難しい場合もあります。あらかじめご了承ください。)

*発表に際し、パワーポイントをご使用の場合は、ノートPCをご持参ください。

*場合によって多少の変更の可能性があります。

*問い合わせ先
打越 正行
karpあmail.goo.ne.jp