『頭を冷やすための靖国論』

1月 14, 2007 under 読書

筑摩書房から送られてきた。
著者である三土修平氏のご配慮であろう。
ちくま新書の最新刊の1冊であり、新聞の新刊案内で知っていて購入するつもりだったのでありがたい。



内容は、右側にも左側にも距離を置いた記述を徹底し、また、単に靖国神社を巡る言説を整理しただけではなく、戦後の宗教改革を担当していたCIE内部における靖国神社への対応などにも2章を割いて言及している。
天皇と国家神道との関係も押さえ、巻末には「神道指令」の全文を掲載するなど、この問題を考えるに当たって、広く一般に読まれるべき一冊であろう。
本書は、明示的にではないが、構成主義的な立場から書かれている。
特に、靖国擁護・反対いずれの側にも、著者に言葉に従うならば、「末法思想」があるという指摘は重要である。
これは何も仏教用語として使用されているのではない。
危機感の表明であり、一種の終末観の表現として使われている。
つまり、世の中の乱れを嘆き、このままでは日本社会はますます悪くなってしまう、という考えだ。
そうした問題を克服するため、靖国神社国家護持や愛国心の必要性を訴える人々がおり、また反対の立場の人々には平和主義や民主主義の危機であり、戦争のできる国にしようという危機感がある。
これは、癒しのナショナリズムや新しい人種主義や差別の問題と同様に、現代社会に対する応答なのである。
ナショナリズムや差別や人種主義などは、単に過去のものが残っているだけではない。
それは新しく構成されつつあるのである。
「プロジェクトX世代」をいかに乗り越えるのか、日本の現代思想を考える上でも有効な一冊であろう。

comments: 2 »

2 Responses to "『頭を冷やすための靖国論』"

  • 三土修平 より:

    著者です。さっそくにご批評をたまわり、ありがとうございました。この問題をめぐっては、政治的立場からする定型化した言説ばかりが世間的には脚光を浴びがちで、地道な研究者の皆様の業績があまり注目を受けない状況が続いていますが、粟津さんをはじめとする研究者の方々のご貢献がもっともっと評価されるようになるべきでしょう。

  • Kenta より:

    著者ご本人からの書き込み恐れ入ります。取り急ぎ、届いたその日に書き込みましたので、雑駁な紹介ですみません。また機会があれば詳しく評じたいと思います。

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