1998年12月14日の夢

12月 14, 1998 under 夢日記

夢日記

第六回

アビス

Abyss

 

 

 

 

 

 

南の海にいた。

 

大海原。360度、海しか見えない。

水平線はゆったりとした弧を描いており、地球が球状をしていることが分かる。

 

 

 

 

 

凪いだ海だ。

いっぱいの太陽。

透明な光。

強い紫外線であるが、それを跳ね返すだけの生命力にみなぎっている。

残酷なほどの生命力。

 

 

 

 

 

 

 

さわやかな風によってできたさざなみ。

白くあわ立つ海水。

透けて見えるのは珊瑚礁だ。

 

 

上空からの視点で見ている。

鳥瞰図。

 

 

 

気がつくと案内役の男と海に潜っている。

原住民といった男。褐色の肌。

      

 

 

 

 

 

一瞬にして

音を失った

青い青い世界に

俺たちはいた。

 

 

 

 

海底はそう深くない。

6、7メートルほどである。

 

 

透明度のある海水で、水の中は明るい。

美しい別世界だ。

 

 

小魚の群れが泳いでゆく。

 

 

死んだ珊瑚がつくった白い砂。

 

 

……。

 

 

……案内の男に導かれるようにして

                      俺は白い岩が盛り上がっているところへ潜ってゆく。

 

ダイビング・セットなどつけていない。

          男も、

                  俺も素潜りである。

 

 

恐怖はない。

明るい海底。

 

岩は石灰質だった。

 

 

 

男は秘密のところに連れていってくれるのだ。

楽しそうな顔をしていた。

 

 

 

 

いつのまにか、岩の内部に入ったらしい。

気がつくと、そこは岩でできたドームだった。

海底にできた鍾乳洞のようだ。

 

 

 

鍾乳石なので

角がない。

 

角のない壁。               角のない柱。

                    石筍。   

 

 

 

 

丸いカプセルのような石室になって、

それがいくつも続いている。

 

 

 

カプセルの底面積は六平方メートルぐらいか。

天井も岩であるがあまり暗くはない。

岩を透かして太陽光が届いているようだ。

 

 

カプセルがいくつも続いている。

そこは海水で満たされている。

 

海  底  の  鍾  乳  洞。

 

 

 

幻 想 的 な        光景だ。

 

 

 

 

 

……。

 

 

ふと、俺は酸素が気になった。

しかし、その不安を察したのか男が微笑んで見せる。

手近の石室の天井の方を指差す。

 

 

俺は水中で身体を翻し、

            ひとつの石室に入ってみる。

 

石室の天井はアーチ型をしていて、

なるほど、

                     そこには逃げ場のなくなった空気が取り残されている。

 

 

 

水面にお椀を伏せた時の状態と同じだ。

 

 

俺は空気の中に顔を出し、息をつく。

空気は、シン、と冷えていた。

 

 

 

ふと見ると、足下の方、カプセル状の石室には何か黒いものが沢山泳いでいた。

             鰹節のような

 

                  のっぺりした流線型のようなシルエット。

 

                          魚かとおもったが、

よく見るとそれは30センチぐらいのアシカの子供だった。

 

 

 

 

そうか。ここは自然の造形を利用したアシカの養殖場なのだ。

ずっと、続くこれらのカプセル状の石室には沢山のアシカの子供がひしめいているのだった。

 

案内の男はそれを俺に見せたかったのだろう。

男はニコニコして、今度は真上を指差して見せた。

養殖場を見せたから、もう外へ出ようという合図だ。

次には何を見せてくれるのだろうか?

 

 

 

……。

 

 

俺たちは浮上していた。

海底の鍾乳洞からでて、海上に戻ったらしい。

音が戻ってきた。

海鳥の鳴き声。

波のさざめき。

照りつける太陽。

さわやかな風。

空気のある世界に戻ったのだ。

 

 

まわりに陸地は見えない。

気がつくと俺たちの目の前に巨大な椰子の樹が建っている。

珊瑚礁の浅瀬に一本だけ建っているのだ。

 

径は40センチほどであるが、高さは20メートルはあろうかという椰子の樹。

ひょろりと。

       信じられないほど長く。

               その椰子の樹は何もない海中に

高く、高く屹立していた。

 

 

そして、その先端部分に小屋があった。

 

 

案内の男はその先端にある小屋を指差す。

ニコニコ笑っている。

日に焼けた顔に白い歯が美しい。

それはまだ文明に毒されていない笑顔だ。

 

 

そして次の瞬間俺たちはもうその小屋の中にいた。

小屋は細い枝を組んで作ってある。

カヤ葺きの屋根は涼しい。

床には椰子の葉を編んだ敷物がしかれていた。

 

 

 

 

 

半裸の老人が座っている。

顔や身体、褐色の肌のところどころ白い模様が描かれている。

どうやらこの男が彼らの部族の酋長らしい。

何か知らない言葉で話しかけられる。

案内の男が通訳したらしく、歓迎の食事が始まるということが分かった。

 

 

 

 

食事は、俺の歓迎のため、伝統的なアシカ料理だった。

あの養殖していたアシカを食べるのだ。

目の前に出てきたのはアシカの子供の丸焼きのようだ。

真っ黒い肉の塊がバナナの皮に包まれている。蒸し焼きにしたアシカの肉らしい。

おいしそうなのかどうか、俺の夢には嗅覚がないので分からなかった。

そういえば特に食欲もない。

強いていえば義務感と、淡い好奇心だけか。

 

 

俺は無感動に料理を見ていたが、こういう場合、断ることは無礼になるので食べることにした。

黙っているのもなんなので、場を持たせるために何か会話をしなければ、と思う。

そこで、酋長に、これはなんと言う料理かと尋ねてみる。

酋長は、好々爺然として答える。

しかし俺にはわからない言葉なので、案内の男が通訳する。

「大切なお客様をもてなすときの伝統料理です」

満面の笑みを浮かべている男の言葉に、俺はうなづく。

やはり思った通りだった。

なごやかな雰囲気だ。

ニコニコしながら男は続けていった。

「蒸し焼きにしています。これは人間の胎児です」

 

 

 

そこで再び最初のシーンに戻った。

 

南の海。

海鳥の鳴き声。

波のさざめき。

360度、海しか見えない。

水平線はゆったりとした弧を描いており、地球が球状をしていることが分かる。

そこに高い一本の椰子の樹が屹立しており、その上に小屋がある。

俺は鳥瞰してそれらの景色を見ている。

 

凪いだ海。

いっぱいの太陽。

残酷なほどの生命力。

 

 

 

 

 

【解説】

 

 

 これもまた実に分からない夢である。

 楽園のような、とても平和な南の海とカンニバリズムが同居している。

 一体、何を伝えんとした夢なのだろうか。

 どうも、夢がいつも水に関係している。

 

 アシカは何の象徴なのだろう?

 人間の胎児とは?

 

 しかし、夢の中では、ほとんど驚いていない。

 

 本文にも書いたが、残酷なまでの生命力に満ちた夢だった。自然の持つ生命力とは、本来、人間の意志など遠く及ばないものなのかもしれない。それを残酷というのは、単なる人間の感傷に過ぎないのだろう。

 

 冬は苦手だから、南の島にでも行きたいものであるが、楽園など何処にもない、というアイロニーなのかもしれない。あるいは、現実逃避への警告かもしれない。

 

 ううむ。

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